Mr.ノーバディ
普段地味で冴えない奴が実はめちゃめちゃヤバい奴だったという、よくある感じの主人公設定ですが、僕はこういうの結構好きでして。
能ある鷹は爪を隠す的な、真に強い人って実力をひけらかさないですよね。
普通は自分のことを認めてもらいたいだとか、自分の方がすごいとマウント取ろうとしたりだとかになると思うんですが、本当に強い人はそんなことはしない。
- 承認欲求がまったくない。
- 自分の力を人に知られると面倒なことになるから。
だいたいどちらかのパターンに分かれるかと思うんですが、今作の主人公は後者タイプのようです。
- 表向きには知られてはいけない職業で実力がないと生きていけない現役。
- すでに引退して静かに暮らしたい。
これまた分かれますがw
Mr.ノーバディはどちらのタイプなんでしょうか。
隠していた自分をさらけ出す出来事や理由も含めて、大好物なジャンルです。
オヤジやジジイが活躍するってのも高ポイント。
早く観たいと思い、早速鑑賞してまいりました。
よろしければお付き合いくださいませ。
Mr.ノーバディを観た感想
オシャレな音楽にのせて繰り広げるアクションがかっこいい。
舐めてた相手が実は殺人マシーンだった作品に、爽快で痛快な主人公がまたひとり加わった!
以下ネタバレがあります。
- 冴えないオヤジ感とのギャップ
- 強すぎない強さ
- ユーモアのあるぶつ切り演出
監査役の正体は冴えないオヤジ?
画像はすべて公式HPより引用。
冒頭2人の警察官に「あんた何者?」と尋ねられる彼は、タバコに火をつけて猫に餌をやりながら「何者でもない(ノーバディ)」と答えるカッコいいおじさん。
その正体は毎日路線バスで会社に通う、なんの変哲もない地味なおじさん。
妻には距離を置かれ、ゴミ出しの日は必ず回収の時間に間に合わない。
息子からも父親としてリスペクトされることもなく、味方といえば幼い次女の娘だけ。
ある夜、やけを起こした強盗に侵入された時に至っては、止めに入った息子を制して何もせずにお金と時計を奪われ、そのことでさらに息子の信用を失ってしまう。
これだけ聞くとなんでこんな人が主人公なの?と疑ってしまいそうですが、実は元FBIの監査役(ヒットマン)、いわゆる殺し屋だったのです。
最初の佇まいから、ただものではない雰囲気がビシビシと伝わってきていましたが、凄腕の殺し屋となれば納得です。
そんな彼が、普段は毎日のルーティーンを淡々とこなす地味な生活を送っているのは、幸せな家庭を持ちたかったからだと、これもまた納得の理由なんです。
殺し屋ともなれば、死と隣り合わせな危険な仕事。
失敗が許されない過酷なミッションは、人としての精神をすり減らすに違いないはずです。
彼自身が引退のきっかけを話していましたが、殺しのターゲットの男が命乞いをしてきた際、心から反省をしていたから見逃したと。
その後その男を追跡してみると、妻と2人の子供と幸せな家庭を築いていたのを見て、自分もそうなりたいと願い、殺し屋を引退するきっかけになった。
自分もまっとうな生活を送ることができるかもしれないという気持ちが、普通の生活を送ることになったわけですが、普通を意識しすぎていたあまり、妻とは冷え切った関係になり、息子にもバカにされる、いわゆるダメおやじになっていたことにハッチは気づくんです。
愛する娘が猫ちゃんのブレスレットを無くしたと言ってきたときに、ハッチの中でこのままじゃいけないとスイッチが入ったんでしょうね。
強盗の居場所を突き止めて、ブレスレットを返せとキレるハッチでしたが、ブレスレットなんて知らないと言われ強盗が盗んだのではなかったことがわかり、壁を殴って悔しがる姿が笑いを誘うというかまだ残念なオヤジ感が出ていました。
そんな冴えないオヤジにもついに活躍の時がやってきます。
すっかり意気消沈したハッチが帰りのバスに乗って帰宅していると、酔っ払った若いチンピラたちが乗ってきて、同乗していた女性に絡み始めたのです。
この瞬間ハッチの中で溜まっていたさまざまな感情が爆発したのか、バスを止めさせ運転手を下ろし、持っていた銃に入っている弾を捨てて「お前らブチのめす」と。
さあ始まったと思ったら、いきなりチンピラのパンチを喰らうという、思わずえ?とw
普通圧倒的にブチのめして爽快みたいになっても良さそうなのに、結構苦戦するんですよね。
そりゃ相手は5人なので大変だとは思うんですが、これまでこの人実はすごいのでは?という描写があったものですから拍子抜けしてしまいましたw
強盗に入られた時は、強盗が持っていた銃に弾が入ってないことに気づき手を出さなかったり、その強盗の居場所を突き止める時は、手に入っていたタトゥーから犯人を割り出す鋭さや、情報を仕入れた店で襲われそうになった時は、彼の素性を知っている男から挨拶されたりと、このオヤジなんだかタダものじゃないぞオーラがバンバン出ていたんですよね。
そういった伏線があったうえでの戦闘だったので、いよいよ本領発揮かと思いきや、結構いい勝負というかドロ試合というかw
最終的にはしっかりと相手を再起不能なぐらいに叩きのめしたわけなんですが、なんだかスッキリしない勝ち方でした。
家に帰るとまだ起きていた妻にボコボコの顔を見られ、「最悪な1日だった」と疲れた表情。
ここから大きく変わっていくハッチですが、まだ少し冴えないオヤジ感が残っていて、なかなか覚醒しないんだなと若干のモヤモヤが残りましたね。
極限までストレスを溜め込んで、何かのきっかけで爆発するという現代社会に対するメッセージも込められているようでしたが、個人的にはそう言ったことは特に感じることもなく、もともと隠し持っていたものを、愛する娘(家族)のためにさらけ出したんだなという印象だったかなと。
無敵すぎない元軍人の強さ
監査役と呼ばれ恐れられていたハッチですが、バスでのチンピラとの戦いではイマイチ実力を発揮できていなかったように感じられました。
元殺し屋ということで当然強いことには違いないですが、完全な肉弾戦で5対1だったということと、ブランクがあったことも影響していたのかもしれません。
後半になると武器を手にしたり事前の仕込みを用意するなど、徐々に無双ぶりを発揮しますが、強いんだけど無敵すぎないハッチに、なんだか応援したくなるのも含めて味のあるキャラクターだなあと感じます。
例えば「イコライザー」の主人公ロバート・マッコールはどんな裏仕事も19秒で完遂する超絶無敵なキャラクターで、そこら辺にあるものすべてを殺しの道具に使って相手を倒してしまうわけです。
「キングスマン」ではオシャレなスーツを身に纏った英国紳士が、華麗にスマートに相手を次々と倒していくカッコ良さを見せてくれます。
ヒーローコスチュームを身に纏い、立ちはだかる敵をバッタバッタとやっつけていくヒットガールの可愛らしいさを描いていた「キックアス」なんかもありました。
みんな共通しているのは無敵感がハンパないってことです。
こう言った作品の醍醐味でもありますし、見ていて爽快なんですよね。
元軍人で殺し屋だったハッチも最終的には無双状態になりますが、徐々に強さを取り戻していく感じや敵が攻めてきた際に、自分が有利に戦えるように馴染みのある職場を戦場に選んだり、事前に罠を仕込んだりとしっかり準備を行うところに人間臭さがあり説得力があったように感じられます。
最後に相手のボスであるユリアンを倒した時も、防弾ガラスに爆弾を取り付けて盾がわりに銃撃を交わしながら突っ込んでいき爆発させるという、見事なアイデアを駆使していました。
「イコライザー」の時のような、ホームセンターでの戦いでそこら辺にあるもの全てを使って相手を倒すというような、自分の有利なフィールドで工夫をして戦うのが見ていてワクワクするし、飽きさせない演出になっているなと思いましたね。
テンポの良さとオシャレな音楽の演出がカッコいい
そしてもうひとつ特徴的だったのが、劇中さまざまなシーンで使われていた音楽に乗せて戦闘を繰り広げる演出が、オシャレでカッコよかったということ。
僕は洋楽に疎いので、なんの曲だったのかは全然わからないんですがw
聴いた感じすごく古い曲を使っていて、その昔の曲とハッチの哀愁みたいなものがうまく合わさっていてすごく良いんですよ。
ちょっとスローモーションにして音楽を全面に打ち出して盛り上げているのも素晴らしかった。
相手のボスのユリアンがナイトクラブのステージで歌い出すシーンもなんかカッコ良かったり。
非常にうまく音楽を使って、ひとつひとつのシーンを印象的なものにしていたと思います。
そして92分という短い上映時間に現れていますが、とにかくテンポがいい。
話がどんどん進んでいくので、見ていて飽きないんですよね。
序盤のハッチがどういう人物かという紹介には、毎日のルーティンをコメディっぽく何度も同じシーンをブツ切りで見せる演出にすることで、地味で冴えない父親というのがすぐにわかるようになっていました。
本格的にバトルがメインになってくると、次々に襲ってくる敵を次々と倒していく展開の連続なので、息つく暇もないくらい攻守の入れ替わりが激しかったりします。
義父の会社を買い取りたいと言っていた伏線を、実際に買い取って最後の戦場にしたり、隣の住人が自慢していた車を敵のアジトに乗り込むときの自分の足に使ったりと、序盤のエピソードをしっかりちゃんと回収していくのも気持ちがいい。
短いのにボリュームたっぷりで見応えのある作品に仕上がっていましたね。
Mr.ノーバディを評価!
はまはま的評価 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 8/10
終わりに・・・
舐めてた相手が実は殺人マシーンだったものとして、魅力的なキャラが新たにまた加わった気がします。
ラストの描写で、まだ戦いは続きそうな感じがあったので、ぜひとも続編を作って欲しいですね。
今度は最初から覚醒しているかっこいいオヤジなので、またアプローチの仕方が難しくなりそうではありますが・・・。
娘の猫のブレスレットでキレる感じとかすごくいいので、コメディ部分を残しつつも爽快な監査役っぷりを期待したいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。