葬式の名人
突然ですが、前田敦子さん好きなんですよね。
国民的アイドルのセンターを務めていたあのあっちゃんです。
世間的には元アイドルのイメージが強すぎて、女優の前田敦子を知らない人も多いかと思います。
でも業界での彼女の評価って結構高いと感じているんです。
名だたる監督さんの作品に多く出演していて、しかも良い評判ばかり聞くんです。
一見棒演技なのかと思いきや、とても自然体な演技をされる方で、でも存在感もあって。
世間と現場の評価がこうも分かれる役者さんも珍しいなって。
もっと評価されても良いのになあといつも思う役者さんなんですよね。
そして今作ではシングルマザーの役なわけですが、私生活の方でもお母さんになったことで色々と重なる部分や演技に生かされていることもあるかもしれないのでより注目すること間違いなしです。
そんな彼女の主演作ということで今回の観賞となりました。
よろしければお付き合いくださいませ。
葬式の名人を観た感想
なんだか不思議な世界観と、どこにでもありそうな現実感がごちゃ混ぜの青春振り返りツアーになんだかほっこりさせられる物語。
前田敦子のシングルマザー姿が本当になってしまった・・・。
以下ネタバレがあります。
茨木高校同級生との思い出や親子の絆にほっこり
亡くなった同級生をしのび、母校で同級生たちと行うお通夜を通して、親子の絆や仲間と青春を過ごした日々を振り返ることのできる、ちょっぴりファンタジーな味付けに笑ってしまったほっこり映画でした。
シングルマザーの雪子は保険料を払ってないくらい日々の暮らしに精一杯で、息子であるあきおが熱を出しても病院に行かせてやれないし、満足に世話をできていない状態に疲れている感じが見てとれます。
吉田の急な訃報で同級生が集まった時も、一歩引いているというか距離をあけているような立ち位置にいるんですね。
実は吉田は雪子の元夫だったことが後にわかりますが、そのこともあったのかもしれないですね。
なんとなくバツが悪そうな感じがよく出ていたし、実際こういう感じのことってあってもおかしくないので前田敦子さんはよく演じていたなと思います。
そんな雪子がどうしてもやらなければいけなかったことが、あきおに打ち明けることでした。
物心ついた頃から父はアメリカにいると聞かされていて、野球をやっているあきおに大リーグのボールを持って会いにきてくれると話していたわけです。
子どもってこういう話をどこまで信じてくれているんでしょうね。
最初は信じていたけれど、一向に現れない父に徐々に現実を悟っていったりしたんですかね。
母親の精一杯の優しさにあえて乗ってあげてるみたいな。
僕も小さい頃から父親はいたんですけどなかなか会えない状況でして、母親に聞いても真実を話してくれないんですよね。
子どもだった僕に話してもわからないのは仕方ないけど、結局ちゃんと話さないまま僕は大人になっていき、なんとなく察するみたいな感じでそれ以上踏み込まないみたいな感じが出来上がってしまったんです。
親としては難しいところですよね。
全部話した方がいいのか、濁しておいた方がいいのか。
話すにしても理解できる歳になってからとか、いろいろ選択肢はあったと思います。
雪子の場合はちゃんと全部話す決断をしたわけです。
お通夜で遺体になった父と向き合い、「ここにいる人はあきおのパパやねん」と。
あきおも「パパほんまにおったやんや、パパのことってママの夢の中の話やと思っていた」とやはり雪子の話を信じていなかったんですね。
自分には父親はいないとわかっていたんですね。
いないと思っていた父が実はちゃんといて、でも交通事故で亡くなってしまい今目の前にいる。
子どもにはなかなか受け止められないくらいの出来事ですが、あきおはしっかりと受け止めるんです。
初めて雪子の親としての気持ちを知ることができる感動のシーンでしたね。
それ以降は雪子も昔のような空気感でみんなと接するようになり、何年経っても青春を過ごした仲間って変わらないんだなあと。
普段まったく会ってなかったとしても、一瞬であの頃の感じに戻れちゃうのが不思議ですよね。
もちろんみんな大人になっているから、社会ではそれぞれの立場を築き上げているわけです。
仕事も家族も順風満帆なやつもいれば、仕事では成功しているけどいい相手に出会えていないキャリアウーマンもいる。
そんな彼女にアタックしようとするも相手にされない議員の憎めなさにはクスッとしてしまいました。
突然の事故によって起きた悲しい出来事ではあったけど、みんなで集まってあの頃を思い出して明るく笑顔で送ってやろうとする仲間の心意気に胸が打たれました。
半分、同窓会のようなしかも自分たちが育った母校でっていうのが、心がこもっていて良かったです。
ぶっ飛んだ演出に好みが分かれるかも
親子の絆を再確認することができ、青春時代を懐かしんでまたこの先がんばっていこうと前向きになれた素敵な作品ではありましたが、青春ファンタジーとうたっているだけあって、なかなか変わった演出が目立っていました。
川端康成の作品を原案に作っているからでしょうが、やっぱり小説の活字の世界観をそのまま映像化するのって難しいと思うんです。
僕が不思議な世界観と現実感がごちゃ混ぜになっていると感じたのが、ここの部分なんじゃないかと。
事故で亡くなった吉田の遺体を母校まで運ぼうっていって、みんなで棺桶を担いで街中を歩くシーンに現実ではありえない、なんならかなり不謹慎なことですよね。
お通夜を母校でやってしまったり、夜中に遺体と一緒に構内を探検したりと実際映像として見るとかなり無理があるなって思ってしまいます。
極め付けは夢でおばあさんの幽霊が現れるところです。
昔のひとっぽい方たちが焼香しにやってきたり、おばあさんの右腕がとれてそれを吉田にくっつけたりとまあまあメチャクチャですw
明かに腕がマネキンでしたしw
小説で読む創造力を働かせる世界を映像で表現するのがいかに難しいかと思わされたかたちですね。
ファンタジーと割り切って楽しむのか、いやいやそこおかしいでしょとツッコむのか真っ二つに分かれるところがある作品なんじゃないかなと。
僕はストーリーとキャラクターさえしっかりしていれば、他のことはあまり気にならないというか補助的なもんでしょと楽しめちゃう方なので、今作においては満足な範囲内ではありました。
葬式の名人を評価!
はまはま的評価 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 6/10
不思議な演出と、家族の絆や昔の仲間との思い出がほっこり感を増して感じることができた。
シングルマザーのあっちゃんを見て、いろいろ思うところがありましたが本当の出来事になってしまったことにビックリでした。
終わりに・・・
賛否が分かれる万人受けする作品ではありませんが、観終わった後に暖かい気持ちになれますし、優しさにあふれた素敵な物語だったなと思えました。
笑いと涙ありの青春ファンタジーは嘘をついてないと。
最初に豊川が病院に駆けつけるところがるんですが、間違ってヤクザの方たちの部屋に入ってしまい「高校生の時の親友です、違う組だったんですけど」「誰かが打った球が逸れて」
「誰が撃ったんや?」「ウチのモンです!」としばらくの間会話が成立してしまうという面白場面で掴まれましたね。
しかも結構な尺を取っていて、そこいる?とツッコんでしまいましたw
笑って泣けてが好きな方にはすごいオススメですので観てみてはいかがでしょうか。
そしてやっぱり前田敦子さんは良かった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。