るろうに剣心 最終章 The Beginning
るろうに剣心が実写化されて約10年も立つんですねえ。
僕は原作の頃から好きで読んでいる思い入れのある作品です。
今も北海道編が連載されている現在進行形の物語ですが、実写としては今回が完結作になります。
最後に持ってくるのは、シリーズでも特に人気の高い追憶編と呼ばれるエピソード。
剣心が人斬り抜刀斎だった頃の幕末のお話です。
るろうに剣心の始まりの物語といってもいいでしょう。
完結作に始まりの物語を持ってくるとは、なんとも粋な計らいというか。
これは楽しみ過ぎて待ちきれん!というわけで早速鑑賞してまいりました。
よろしければお付き合いくださいませ。
るろうに剣心 最終章 The Beginningを観た感想
今までの剣心と違う、人斬り抜刀斎の悲しい恋と罪の物語。
誰もが幸せになれる新時代のために戦った男の行き着いた先は、さらに過酷な道でした。
巴の最後の言葉に2つの意味を感じるすごい演出に震えた。
以下ネタバレがあります。
- 剣心と巴の複雑な感情の行方
- 役者陣の熱演
- 派手さは抑えめだが、狂気を含んだ凄みのあるアクション
巴の最後の言葉の真意を考えてみる
物語ラストにて剣心が巴を手にかけてしまったシーンでのこと。
斬られた巴は、剣心の腕の中で「ごめんなさい、あなた・・・」と言うんです。
これってどっちにも取れるセリフなんですよね。
単純に剣心に対してごめんなさいと言っていると解釈ができますが、同時に夫になるはずだった元婚約者に対して言ってるんじゃないかとも取れるんですよね。
巴は婚約者が剣心に殺されたことで、復讐をしようとして剣心に近づいたわけです。
けれど剣心と接しているうちに、彼を愛してしまった。
そのことで葛藤があったことを、自分の書いた日記に綴っています。
要は婚約者の復讐をできなかったことに対する「ごめんなさい、あなた」という解釈もできるんです。
この一言がものすごく深い一言になっているところに、ちょっと鳥肌ものでしたね。
巴が最後に剣心の頬に持っていた小刀で傷をつけた意味ってなんなんでしょうね。
婚約者から受けた傷に自分の手で傷を上乗せする。
なんか色々考えちゃいますよね〜w
いやー、ここすごいシーンだよなあと思ってしまいました。
罪の意識と幸せの意味
今作るろうに剣心 最終章 The Beginningは剣心が人斬り抜刀斎だった頃のお話です。
これまでの剣心は、「おろ?」とか「〜でござる」など割と力の抜けた穏やかな雰囲気で、周りのキャラクターたちも、わちゃわちゃして賑やかな感じでした。
しかし今作では、そういったおちゃらけたところは一切なく、剣心は常に冷静沈着で思い詰めているし、忠実に任務をこなす姿には残酷な一面ものぞかせる、まさに幕末の動乱を生きている維新志士なわけです。
この重々しい空気の中で、剣心は新時代のためにと、倒幕に邪魔な人間を片っ端から斬っていくんですね。
倒幕派である桂小五郎の命を受けてそれを実行する、いわゆる暗殺者です。
「私怨はないが・・・」と指定された人物を、確実に無感情に斬る姿に狂気を感じるほど。
薫と出会った頃には、想像もつかない壮絶な時代を生き抜いてきた剣心ですが、人斬りの仕事に何も感じていないわけはありません。
むしろその逆で、自分が斬ってきた犠牲の先に、本当に明るい未来があるのだろうかと常に葛藤を抱えているんですね。
その思いは人を斬れば斬るほど増していく一方で剣心の心を蝕んでいきます。
そりゃ今まで人を斬ったこともない少年が、いきなり暗殺をするなんて、剣の腕は一流でも心がついてこなくなるのも当たり前なわけで。
その葛藤をより感じた出来事が、とある暗殺の現場にいたひとりの若者と対峙した時のことです。
その男はこれから祝言をあげる予定があったところを、剣心に襲われて命を落とすことになるのですが、斬られても斬られても立ち上がって必死に生きようともがくんです。
「自分には大切な人がいるんだ!まだ死ねない」と。
その生きようとする執念は、剣心の頬に一太刀いれるまでに。
そこまでの思いを持った人を殺めてしまった事実が、一生消えない頬の傷とともに心の奥底にも疑念が残る結果になりました。
そんな時に出会った雪代巴という女性が、剣心にとってかけがえのない存在になるんですね。
巴は剣心に問い詰めます。
「私がこの場で刀を手にすればあなたは私を・・・」「このままずっと人を殺め続けるのですか?」
犠牲のうえに成り立つ幸せに意味はあるのか、あなたもその犠牲者のひとりなのではないかと、新時代のために人斬りをする剣心の心を揺さぶりかけます。
剣心ってこの頃から自分を犠牲にして戦っているんですよね。
常に人のために動くことで、結果的には自分というものをないがしろにしているような。
けれど剣心自身はそんなことはそっちのけで「新時代のためには誰かが剣を振るわなければならない。たまたま自分がそうであっただけだ」と固い意志を感じさせます。
奇兵隊に志願した時から、剣心の心は決まっているんですよね。
自分の剣が皆の役に立つのであればという想い。
そこに桂小五郎の意思がピッタリとはまった。
桂が剣心を引き取ることになった時に高杉晋作はこう言います。
「一人の若者の人生を台無しにするのだから、自分は倒幕祭りのきれいな神輿であることを貫け」と。
桂小五郎はリーダーとして、剣心は裏の暗殺家業の実行部隊として。
それぞれのポジションでのやるべきことを全力でやり遂げる。
幕末の動乱の中で自分が何をするべきなのかを、それぞれの人物が一生懸命に自分ができることを全うしているってことなんですよね。
その先に待っている未来を信じて。
結果、剣心は新時代のために人を斬ったあとは、2度と人を殺めることはしないと誓い現在の薫と出会うことになるわけです。
そして先日のThe Finalでの縁との対峙で、巴を殺めてしまったことや、人斬りだった自分の罪と向き合い、生きることで一生を賭けて償っていくことを決意する。
人斬りになった瞬間から背負った業や罪は、剣心にとってずっとつきまとっていく、とても重いものなのです。
ただ自分の剣がみんなを幸せにすることになると思っていた剣心にも変化が訪れます。
それは巴と過ごした何気ない日常から気づくことになりました。
池田屋事件、禁門の変以降、長州藩の立ち位置が微妙になってしまい、剣心もしばらく身を隠すことになるのですが、そこに周りから怪しまれないようにと、巴と一緒に暮らすことになるんです。
町外れの農村での静かな暮らしです。
畑を耕して、採れた作物を食べ、薬売りとして毎日を生きるという平凡な日常を過ごすうちに、この日常こそが幸せなんだということを感じ始めるんですね。
そして隣には巴がいて、穏やかな時間が流れる。
いつしか芽生えた巴へに惹かれる想いと、その人を守りたいと思う気持ちが剣心の価値観を変えていきました。
新時代のためにと振ってきた剣がいかに思い上がりだったか。
巴と一緒にいることで、本当の幸せというものを知ることができたんですね。
時が来たら、愛する人を守ることに生きたいと、初めて剣心自らが望んだ未来でした。
巴が実は間者だったこと、そのうえで剣心を愛してしまったこと、ふたりの想いは叶うことはありませんでしたが、このかけがえのない日々が、その後の剣心の人生に多大な影響を与えたのは言うまでもありません。
人斬りとしての罪の意識と、幸せの意味を知った剣心は、新時代の訪れとともに剣を置くことになりました。
物語の終わりとともに、るろうに剣心という物語がここから始まったわけです。
2度と人を殺めないという自身の想いが、しっかりと守られているのはこれまでの剣心の活躍を見れば一目瞭然ですよね。
薫に出会う前と後をつなぐ今作The Beginningを観て、また過去作も見返したい気持ちにさせてくれました。
今回もハマりすぎなキャスト
るろうに剣心のいいところのひとつとして、キャストが原作のイメージとめちゃくちゃあっていることですよね。
剣心は佐藤健さん以外に考えられないし、薫の武井咲さんもピッタリ。
志々雄や宗次郎なんかもホントに合っていました。
それこそ先日公開のThe Finalでの、雪代縁役の新田真剣佑さんなんかハマり役すぎてビビりました。
やっぱり漫画を実写化するうえで、ある意味一番といってもいいくらい、キャストって大事な要素だと思うんですね。
そういう意味でるろうに剣心って、漫画実写作品の中でトップレベルの再現性なのではないでしょうか。
それは今作でも健在です。
まず巴役の有村架純さんは、発表を聞いた時からおお〜ってなりましたw
ビジュアルはもう最高なんですけど、なんとなく巴のクールな雰囲気と有村さんってどうなのかなとは思いましたが、実際有村さんの演じている巴はすごくしっくりくるんですよね。
あまり感情を表に出さない演技が、これまでの有村さんにはない魅力がありました。
「花束みたいな恋をした」のサブカルヲタク女子も可愛かったんですけど、巴のような静かな感じの有村さんも美しかったです。
あとは沖田総司を演じていた村上虹郎さんもすごく良かった。
病弱な沖田の危うい感じと、それでいて剣に純粋なところなんかもよく出ていて見応えがありました。
そして桂小五郎を演じた高橋一生さんも、長州藩の長としての冷静さと判断力や、剣心を気遣う優しさなど、いくつもの顔を使い分けていてさすがだなあと。
高橋さんの懐の深さというか、内に秘めた熱さが桂小五郎という役とピッタリ合っていましたね。
ひとつだけ言わせてもらうとすれば、斉藤一だけは誰か若い俳優さんでやってほしかったですね。
なんかひとりだけすごい老けてるんですよねw
そこだけちょっと気になりました。
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狂気を含んだ人斬りとしてのアクション
これまでのるろうに剣心とは違い、かなり抑えたテイストの作りとなっていたThe Biginningですが、見どころであるアクションはしっかりとあります。
ただ今までの剣心と決定的に違うのは、人斬りとして相手を斬るアクションだということです。
現代の剣心は逆刃刀を使っているので、いわゆる峰打ちのような倒し方なのに対し、今作では人を殺める暗殺の剣なので、斬った時に血しぶきが飛ぶんですね。
これと人斬り抜刀斎としての暗殺が加わることによって、非常に重苦しいのと凄惨さが増しているように感じられます。
敵を完膚なきまでに斬り殺す剣心の姿からは、狂気を感じさせます。
まさしく幕末の動乱にふさわしい緊張感のあるアクションに仕上がっていますね。
そして特に見どころなのが、沖田総司と対峙するシーン。
原作では一瞬しか出てこない沖田を、今作ではがっつり登場させて剣心と戦わせることにしたのは、凄く盛り上がる演出でしたね。
実在の人物と剣心が戦うわけですから、単純にワクワクしちゃいました。
低い姿勢で下から突き上げるような剣術や、病気で血を吐きながらも戦う沖田の姿がめちゃくちゃカッコ良かったです。
あの有名な池田屋事件の裏で起きた、ちょっとした戦闘が胸アツ展開でした。
るろうに剣心 最終章 The Beginningを評価!
はまはま的評価 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 8/10
ひとつだけ願望としてやって欲しかったのが、内通者の飯塚の処遇です。
原作では桂が飯塚を処分するために追っ手を差し向けるわけですが、その人物があの志々雄真実なんですね。
今作でもその描写をやって欲しかった!
藤原竜也さんが友情出演的な感じで出てくれれば超激アツ展開だったんですけどねえw
The Finalでの宗次郎の無理やり感に結構ハテナだったので、こっちは是非ともやって欲しかったです。
鑑賞した方の評価
主役二人の所作がとにかく美しく、画面づくりが素晴らしかったです。
るろうに剣心らしくないと追憶編を観てない人は感じるかも。シリーズの他3部作と圧倒的に違うのは以下の点。
1.不殺の誓いを立てる前である
「殺さないように立ち回る殺陣との違い」です。
同じ剣心のアクションなのに見栄えが違うのは、一撃必殺の剣だから。
骨折や脱臼を狙うと吹っ飛ばすアクションで派手に立ち回りますが、殲滅を意図しているので一見地味です。
淡々と急所を狙って効率的に刀を振るう。振るうというより、敵の首を辿るという方が正しいかもしれません。素晴らしいリアリティでした。2.血飛沫が上がる
逆刃刀ではないので、血の雨が降ります。本来のチャンバラの形ですが、見慣れない人にはショックだったかも。3.史実をベースにしたストーリー
漫画らしいフィクションはあれど、史実が元になっているので、詳細な人物紹介などはありません。配役もよく、誰が何の役かイメージ通りでわかりやすかったのですが、幕末の歴史が一通りわからないと辛いかもしれません。シリーズ1作目から見直したくなりました。
https://eiga.com/movie/92395/review/ 映画.comより引用
漫画原作の実写化で、否、日本映画で最高作の一つであることは間違いありません。
冒頭では、今までとは違う暗殺者としての人斬抜刀斎が鬼気迫る感じで登場してくるので、過去の作品を知っているだけに最初は違和感を感じながらの鑑賞だった。
https://eiga.com/movie/92395/review/ 映画.comより引用
しかし、剣心の妻となる雪代巴との出会いで徐々に人間らしさを取り戻していく過程も丁寧に描かれており、剣心自身も幸せだと感じている事が映画を見ている側にもちゃんと伝わってきた。
また巴の視点からも、敵だと思っていた剣心に接していくことで心惹かれていく姿や、亡き婚約者の事を思うと素直になれない、心の葛藤を有村架純さんは表情や仕草などで上手く演技されていて凄いと思ってしまった。
鑑賞後の余韻が、言葉に上手く表現できないほどの衝撃だったので、最後に切なさが残る内容の映画でした。
今作は、アクションシーン満載の歴代のるろ剣シリーズとは一線を画す、本格時代劇の色合いが非常に強い作品であり、個人的にはシリーズの中で一番好きでした。
ただ、「なぜ巴が、清里を斬った憎むべき相手である剣心に心惹かれていったのか?」に関する描写がほとんどなく、
漫画やアニメの追憶編を予習していない人は、その部分の繋がりがわかりづらいのではないかな、、という点が唯一の残念なポイントでした。とはいっても、シリーズ第一作から映画館で欠かさず見てきた一ファンの視点から見て、堂々たる完結編であったことには間違いありません。
監督、キャスト・スタッフの皆さん、約十年間に渡って、本当にお疲れ様でした。
https://eiga.com/movie/92395/review/ 映画.comより引用
るろうに剣心の最初の物語。
https://eiga.com/movie/92395/review/ 映画.comより引用
殺さずの誓いをたてる前だからもちろん斬るわ斬るわ。佐藤健の洗練されたアクションシーンは必見。
最初は剣心の感情が描かれていたが、雪代巴に心を開くようになってからは話がとにかくダラダラとしていったのが残念。
最初は良い感じだったため後半と温度差が出てしまった。
鑑賞した方の評価を見てみると、絶賛のなかにちらほら否定が入ってきてるという感じですかね。
原作を読んでいる人は、褒めている意見が多かったですが、映画だけを観ている方は今までの剣心とテイストが違うことに違和感を感じている意見があったように見られます。
確かに派手なアクションはなりを潜めていましたし、恋愛要素が強かったのも、いつものるろうに剣心とは変わっていたのは事実です。
後半の少し取ってつけた感のある展開もある意味納得はできますね。
逆にキャストの演技や、映像の美しさなんかはほぼ誉めている意見ばかりだったので、クオリティ的な完成度はやはり評価の高い作品なのかなと思います。
原作ファンが納得の出来なのが、原作の実写化には一番大事なのかなと思っていましたが、いち映画としての評価はまた違ってくるのはなんとも難しいところですね。
終わりに・・・
これでるろうに剣心もラストかと思うと少し寂しい気持ちもありますが、ラストにふさわしい段違いのクオリティだったのかと思います。
今後もたくさんの漫画が実写化されるでしょうけど、漫画の実写映画として、ひとつの完成形だったシリーズといってもいいのではないでしょうか。
10年続いたというのも本当にすごいですよね。
改めてるろうに剣心って時代を築いた作品なんだなあと実感します。
原作の方も北海道編として復活していますし、まだまだ現在進行形なので、一握りの可能性を信じてまた観ることができますようにといっておきましょうw
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。