ジェントルメン
最近は裏社会を描いた作品って少なくなっているなあと。
今のご時世、そりゃ仕方ないよなとは思いつつも、僕はもともとノワールものが大好きなので、歯がゆい気持ちでいっぱいなんですよw
「あー、アイリッシュマンめっちゃ良かったなあ」「この前観た21ブリッジなにげに超良作じゃん!」
などと常にこの手の作品を欲しているわけですが、そんななかでの予告で観た今作「ジェントルメン」。
すぐに「これは観ないと !」と思いました。
これまた大好きなマシュー・マコノヒーが麻薬王だって!?
しかも監督はガイ・リッチーと来た。(実は彼の作品は見たことがないのですが・・・スミマセン)
「とにかくなんだか面白そうだ!」という自分のアンテナを頼りに、早速鑑賞してまいりました。
よろしければお付き合いくださいませ。
ジェントルメンのネタバレあり感想
これは面白い!
テンポの良さと、クセの強いキャラクター達の、飽きさせない騙し合いの展開が熱い。
真面目な不真面目ユーモアにもクスッとさせられる。
とても観やすいクライム・サスペンスの出来上がり。
以下ネタバレがあります。
- オープニング演出からすでに面白くなりそうという期待感
- 裏社会の黒さを描いているのにポップな感じの仕上がりが観やすい
- 映画内で映画の脚本という語り口調で進んでいく変わったストーリー構成
豪華キャストによるクセのあるキャラクター達の見どころ満載な主導権の奪い合い
オープニングの期待感がハンパない
面白い映画ってオープニングからいきなり良い予感がするんですよ。
おー、キタキタ!はじまるぞ〜!!
なんだかわからないけど、ワクワクするなあ!みたいな感じで。
根拠のない期待感というか。
そういう意味でこの「ジェントルメン」はすごく面白くなりそうな予感がオープニングで感じることができたんですよね。
まずは今作の主役であるミッキーが、バーで酒とつまみを注文するところから始まるんですが、ここがもうオシャレなんですね。
ジュークボックスからレコードが出てきて流れる音楽がまずオシャレ。
そして注文したビールをサーバーで注ぐ、ピクルドエッグと呼ばれていた漬けていたゆで卵が食欲をそそります。
そして軽くひとくちビールを飲むミッキーに、本人のナレーションで王とはこういうものなんだと解説が入る。
ここまでの流れで「おーカッコ良い〜!」ってなっているところで、妻と電話で話しているミッキーに後ろから忍び寄る男が見えたかと思えば、いきなり銃声がして、グラスに血が飛び散る。
そこからのオープニングクレジットが始まるという、なになに?ミッキーいきなり撃たれちゃったけど大丈夫なの!?という疑問と同時に、うわ、こりゃ面白くなりそう!という期待感がハンパないんですね。
続きが気になるから早く見せて〜となった時点で、僕はもう作品の虜になってしまいました。
つかみは抜群といってもいいオープニングなのではないでしょうか。
この後の展開の面白さがすでに確定してしまったぐらいの、インパクトがあってオシャレな冒頭シーンだったと思います。
フレッチャーのウザさと冷静に仕事をこなすレイの対比が面白い
この作品の変わったところとして、物語の進み方です。
ミッキーの身辺を調査して掴んだネタをエサに、彼の右腕であるレイモンドにゆすりをかける私立探偵フレッチャーの語り口調で、だんだんと真実が浮かび上がってくるという図式。
ひとつひとつの場面をオーバーな表現で面白おかしく語るフレッチャーと、それを冷静に聞くレイモンドというのがメインという構成なんですね。
そのフレッチャーの話はなぜか映画の脚本という形で語られるので、この話は真実ではないのか?と一瞬疑ってしまいそうになってしまうんですが、実際は彼がミッキーの物語として回想していく内容になっています。
よっぽど掴んだネタに自信があるのか、高額な金額を要求したり、一緒に酒を飲まないか、ゲームをしようじゃないかと、とにかく余裕なフレッチャー。
そんな彼に冷静に付き合うレイモンドがちょっと不気味な感じもしますが、フレッチャーはお構いなしに上機嫌で物語を語っていくわけです。
この一連の流れで彼のこれまで歩んできた道のりがわかるというか。
まあとにかくウザいんですよねw
絶妙に神経を逆撫でしてくる感じなんですけど、なんかちょっと笑っちゃうんですよね。
よくもまあ次から次へと口達者な言葉が出てくるなって感じで、逆に感心してしまうくらい。
これが私立探偵としてこれまで生き抜いてきた、彼なりの処世術とでもいうのでしょうか。
そのフレッチャーに静かに付き合ってあげているレイモンドもなんだか可愛くてw
ホントならミッキーの秘密を知る人物なんて放って置けるはずもないんですが、嫌々ながらも冷静に話を聞く姿に同情してしまいます。
ミッキー右腕と言われるだけあって、彼から絶大な信頼を得ていレイモンド。
彼の指示通りに動くだけではなく、先読みしてことが大きくならないように動くのもお手の物。
そんな仕事ができる部下だからか、何かと面倒なことを任されては、ひとつひとつ淡々と丁寧に仕事をこなす姿にMVPをあげたくなりましたね。
ミッキーの立場を脅かす秘密を抱えているフレッチャーと、ミッキーを守ることに全力を尽くすレイモンドの、動と静の駆け引きは今作の見どころのひとつといっても良いですね。
緊張感の中にある絶妙なユーモア
裏社会の物語なので、出てくるキャラクターは当然みんな悪党だし、実際血に染まったやり取りが行われている中で、なぜだか笑ってしまうようなユーモラスがあるのがこの作品の良いところでもあります。
例えばレイモンドが、ミッキーと親密な貴族であるプレスフィールド卿の家出した娘を連れ戻そうと迎えにいくシーン。
娘のローラは彼氏とその友達と薬漬けの状態でマンションに住んでいます。
そこにやってきたレイモンドは穏便に済ませようとしますが、彼氏や友達とやり合っている間に、あやまってその友達をベランダから突き落としてしまいます。
マンション下では部下が車で待っているんですが、何やら半グレのような若者たちに絡まれている。
そんな中で、ベランダから落ちた友達が降ってきて、当然その彼は死亡。
その様子を半グレの若者たちがスマホで撮影したからさあ大変。
SNSに拡散されたらマズいことになってしまうので、彼らからそのスマホを奪おうとしますが、みんな一目散に逃げていきます。
なんとしてでもスマホを確保しないといけないレイモンドらおっさん達と、半グレの若者たちの鬼ごっこが始まります。
本人達はいたって真面目に仕事をこなしているのに、なかなか捕まえられないおじさん達に思わず笑ってしまいます。
なんとかスマホは回収できたものの、彼氏の友達アスランを死なせてしまった大失態。
しかもそのアスランはロシアンマフィアの息子という厄介な存在で、絶対に知られてはいけないように、遺体を持ち帰って自宅の冷凍庫に入れて凍らせてしまいます。
そして頃合いを見て、遺体を処理しようと部下が運び出そうとするんですが、そこでトイレから帰ってきたフレッチャーと鉢合わせてしまうタイミング。
ここのお互いの絶妙な間と気まずさが何ともおかしくて、声を出して笑ってしまいました。
他にもミッキーの大麻製造所にストリートギャング集団の「トトラーズ」が盗みに入るんですが、その様子をyoutubeで撮影してラップに乗せて配信してしまう事態に発展してしまいます。
こういった襲撃って、ライバルファミリーとか、警察とかが乗り込んでくるのが普通なんでしょうけど、YouTuberに襲われてしまうという、なんか今時だなっていう展開が面白かったりします。
今のご時世は表立って悪いことは、すぐに一般人にSNSで広められてしまってりするのが昔のわかりやすい抗争や警察の取り締まりなどとは注意する相手が変わってきてしまっているんだなあと時代を感じさせてくれる内容でしたね。
そんななかでやっぱり大変だったのがレイモンドで。
動画を削除するように不良少年の世話をしたり、遺体を処理するのにバタバタだったのにフレッチャーの相手をしなければならない。
製造所を襲った「トトラーズ」の問題に関しては、彼らの面倒を見ているコーチが謝りに来たことで、彼らに協力させることに成功して、結果的には大助かりになりましたが。
本当にお疲れ様です!と言いたくなるレイモンドが影の主役じゃないかと僕は思いますw
結末はマシュー演じるミッキーの手の内にあった
「ジャングルの王はうわべの振る舞いだけでなく、本当の王にならなければならない」
冒頭、ミッキー自らこう語る彼の佇まいは、常に自信に満ち溢れ、どんな時でも攻めの姿勢を崩さない、まさしく真の王者に相応しい存在感を放っています。
そんな裏社会の王を演じるマシュー・マコノヒーが本当にカッコいいんですよね。
もともと僕がマシュー好きっていうのもありますがw
彼が演じる役は、裏の顔の側面をもつキャラクターが一番あっている気がしますね。
常に取り乱すことなく、先手を打ち相手を圧倒する王者の風格を、しっかりと体現しているマシュー・マコノヒーの演技にしびれてしまうわけです。
唯一、ミッキーが取り乱したのが、妻のロザリンドがドライ・アイに襲われて危険に晒されてしまうシーン。
彼は血相を変えて、ロザリンドを救出すべく車でブッ飛ばす姿が印象的で、普段は冷静沈着に物事を推し進めるタイプのミッキーの、妻に対する愛情がすごく感じられて、グッときましたね。
裏社会のボスが、奥さんにだけは頭が上がらないっていうギャップが、かわいらしくもあります。
足を洗って、妻と穏やかに暮らしたいという彼の願いは、”華麗なる騙し合い”を経て、結局王者は王者のままでいるしかないということを再確認させられたのかもしれません。
ジェントルメンの映画を評価!
はまはま的評価 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 9/10
Twitter評の通り大絶賛の部類の作品となりました。
カッコいいのになんだか面白いシリアスとユーモアのバランスが絶妙。
豪華なキャストたちのテンポの良い騙し合いは、あっという間の2時間だった。
終わりに・・・
出てくるキャラクターはみんな悪党だし、ぱっと見ロンドン版「アウトレイジ」のような気がしなくもないですが、「なんだバカヤロー!」「なんだてめえコラ!!」みたいな怒号はまったく聞くことはなくw
あくまで表向きは、穏便に静かに相手を追い詰めるといった、洗練された悪事という感じでしょうか。
SNSの普及で誰もが悪を取り締まれる状況の中で、裏社会のやり方というのも劇的に変わってきているんですね。
ミッキー自身もそういった時代の移り変わりに疲れてしまい、自身のビジネスから足を洗いたかったのかもしれません。
とにもかくにも、”華麗なる騙し合い”の結末は、ジャングルの王の王座防衛ということで。
早く引退させてくれよ!と心の声が聞こえてくるようですw
あっという間の鑑賞時間で大変満足できた作品でしたね。
遅ればせながら、ガイ・リッチー監督のファンがひとり増えました!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。