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Hokusai

葛飾北斎の波の絵はこうして生まれた!Hokusaiをネタバレありの感想で評価

Hokusai

葛飾北斎といえば、あの波の絵を思い浮かべます。

・・・・・それぐらいしかわからないw

実際作品以外の彼に関する資料はかなり少ないようで、葛飾北斎がどんな人物であったかということはあまり知られていません。

ただその少ない情報の中でも見えてくるところは、絵に一筋の人生で他のことにはてんで無頓着な頑固者だったということ。

そして平均寿命が30〜40歳だった時代に90歳まで生きたんですよね。

90年もの年げつを、ただひたすら絵に捧げ続けるなんて到底できません。

後の世の、世界の芸術に影響を与えた葛飾北斎という人物の生涯を描いた「Hokusai」。

いったいどんな人生だったのか知りたい。

ということで早速鑑賞してまいりました。

よろしければお付き合いくださいませ。

Hokusaiを観た感想

「ただ描きてえから描くだけだ!」「こんな時だからそこ描く!」。

葛飾北斎の絵にかける情熱がこれでもかと伝わってくる。

ただひたすらにその道を極めんとする姿にしびれた。

以下ネタバレがあります。

ここに注目
  • 描く意味と才能への嫉妬
  • 晩年になってますます輝く絵への探究心
  • 柳亭種彦との友情から見える表現の自由

誰もが通る表現者としての葛藤

若い頃の北斎は、腕はいいが生活もままならない期間を過ごしていて、言ってみればずーっとくすぶっている状態でした。

そこに今で言うプロデューサーである重三郎と出会うことで、彼の絵師としての才能が花開いていくわけなんですが。

この頃の北斎がまあ典型的な売れない芸術家でしてw

自分の描きたいものしか描かねえ!とか俺の方が上手いだろとか、とにかく尖りまくっているんですよね。

こういう世界ってやっぱり売れた者が正義というか、認められなければ価値がないと同じようなもので、北斎も後者の方の若者なんですね。

そのくせプライドだけは高くて、自分以外は認めないオーラを周りに撒き散らしていたりして。

現代に置き換えてみても同じなんですよね。

要するにどこにでもいる、自称芸術家なわけです。

よくあるパターンのやつです。

でもこれって芸術に携わるひとは、誰もが通る道なんじゃないかと。

ただ上手いだけの人ならごまんといる、それにプラスして自分だけの色や強みみたいなものが必要になってくる。

だからこそ歌麿写楽の才能に激しく嫉妬心を燃やすのも理解できるし、自分でもわかっていたことなんだと思います。

同時に写楽のような、道楽で描いていても世間に認められてしまう天才という存在に抗おうとしたのかもしれません。

自分は何を描きたいんだ?なぜ絵を描いているんだ?ともがいてもがいてもがき苦しみました。

大自然の中で、生死の境をさまようまでに行き着いた先に、自身が絵を描く意味を見いだし自分なりの答えを見つけることになります。

その答えはとてもシンプルで、ただ描きたいと思ったものを好きに描いただけと。

子供の頃に一心不乱に描いていた時のように、本当の自分を取り戻したようです。

描く本質を理解して描いた絵が波の絵だったんですね。

歌麿写楽とは違う、風景画というところが、彼にしか描けない唯一無二の証だったのかもしれませんね。

こうしてみると北斎という人物は、ものすごい努力家タイプだったのではと思います。

もちろん本人は、自分が努力して絵を描いている自覚はないのでしょうが、長い年月をかけてその道を極めていく、自分に厳しくて正直な人なんでしょうね。

そんな北斎の可能性に重三郎は気づいていたからこそ、何かと気にかけていたのではないでしょうか。

絵は世の中を変えられる」という重三郎の言葉が、後の北斎に深く刻まれていくことになります。

老いてなお描くことの情熱に満ち溢れる

北斎が「冨嶽三十六景」を完成させたのは、70歳を過ぎてからのこと。

その何年か前には脳卒中で倒れ、手に痺れが残るほどの病を経験しています。

あの有名な絵を描いたのが、おじいちゃんになってからということに驚きましたし、脳卒中で倒れた後も描き続けるなんて普通じゃ考えられません。

しかもその状態で旅に出ていたというから、さらにびっくり。

今だから見えるもんがきっとあるに違いない」「まだまだ勝負したいんだ世の中と

老いてますます湧いてくる絵への情熱に頭が下がる思いです。

70歳を過ぎても、自分の中では全然納得のいく絵が描ける境地には至っていないということなんでしょうねきっと。

そうして旅をしてまわった先々から見える富士を描いたのが、後の代表作である「冨嶽三十六景」に繋がっていったのではないでしょうか。

思いついたことをその場ですぐ絵におこしたり、自然に触れ赴くままに感性を研ぎ澄ます姿は、若い頃の彼と少しも変わってません。

すべての経験は絵の糧になると言わんばかりの行動力に脱帽しました。

表現の自由の制限に抗い続ける覚悟

作中で北斎柳亭種彦という戯作者と、親密な関係を築いています。

仕事のパートーナーでもあり、よき友人でもあり、お互い刺激を受けて自身の作品に磨きをかけているようです。

実は種彦は武家の出身で、本来なら絵を取り締まる側の人間なのですが、身分を隠して戯作者として筆を取っていました。

この時代では芸術はお上への忠誠を損なうことだと言われ、禁止されている行為だったのです。

重三郎の講書堂も弾圧を受けたり、歌麿も捕らえられて罰せらた過去がありました。

そんな世の中で北斎は、ずっと絵を描き続けてきました。

処罰が怖くて絵をやめるなんて選択肢はこれっぽっちも考えたことがないんですよね。

実際政府からの圧力をどうかわしてきたのかは語られていませんが、ものすごくやりづらい世の中を生きてきたのは想像できます。

種彦にも疑惑が向けられることになり、戯作者をやめるべきなのか迷う場面が訪れるんです。

絵のためにすべてを捨てられますか?」という問いに北斎は答えませんでしたが、「いつかは人に指図されずに生きていける世の中が来るのを見たい」という言葉に種彦も同意し、「俺は俺のやれることをやるだけだ」と語る北斎に、本心は絵にすべてを捧げる覚悟を持って描いているんだろうなと感じましたね。

種彦もまた覚悟を持って書く事を決意し、幕府に自分の正体を明かします。

その顔には一点の曇りもなく、戯作者としての道をまっとうした姿がありました。

処罰をされた種彦を見た北斎は、再び筆を取り絵を描き始めます。

こんな時だからこそ描く」と言い、出来上がったその絵は生首の絵

言葉を失うくらいに、おどろおどろしい迫力がこめられたその絵を見て、これは種彦の無念を表していたんじゃないかと感じました。

明らかに他の作品とは異質で、絵のタッチも違うし、何かとても強い念が込められた絵でしたね。

正直僕は、波の絵よりもこの生首の絵に衝撃を受けました。

実際の時代背景的に、種彦が関係していたのかはわかりませんが、彼の死を受けてこの絵を描いたと解釈すると、すごくしっくりくる気がします。

いやー、本当にすごい絵だなあと。

作中で、これを世に出したら処罰されてしまうと、弟子の鴻山に預けることにしていることからも、やっぱりただごとじゃない絵を完成させてしまったんだなと思いました。

自由な世の中への北斎なりのメッセージだったのでしょうか。

Hokusaiのここが良かった悪かった

実在の人物を取り上げる作品ということで、実際の史実との兼ね合いなんかも難しかったとは思いますが、北斎という人物がよくわかるストーリーだったと思います。

そして演じた役者陣もすごく良かったですね。

青年期の柳楽優弥さんはもうピッタリすぎて。

若い頃の葛藤とか嫉妬とか、負の感情をうちにこもらせるくすぶっている感がよく出てましたし、ちょっと不安定な危うさを持った目力がすごい。

その後の家庭を持つことに戸惑いを見せる不器用さなんかもめちゃくちゃ伝わってきました。

老年期の田中泯さんは何もいうことありませんね。

口数の少ない頑固老人がハマっていましたし、顔芸といったら失礼ですがw風が吹くシーンや絵の具を浴びるところなど言葉はいらない佇まいはさすがという感じ。

種彦演じる永山瑛太さんが、自分の正体を明かす時の覚悟の決まった表情なんかは見ていて鳥肌ものでした。

北斎を導く優しさがあふれていた阿部寛さん演じる重三郎や、美人画の大家というだけあって色気のある雰囲気がダダ漏れしていた歌麿演じる玉木宏さん。

気難しい北斎を支える可愛らしさも見せてくれたコト役の瀧本美織さんも良かったです。

役者陣の素晴らしい演技があってこそのHokusaiだったのではないでしょうか。

逆に悪かったというほどではないですが、北斎が開眼するまでの描写が抽象的だったので、具体的にあれやこれやと、こうしてきたから描くことができたんだよというのを見せて欲しかったですね。

あとは脳卒中で倒れて、手に痺れが出てしまった後に、旅から帰ってきたらもう治っていたのがえっ?てなりましたw

なんか治療したとか、静養したとか何もなかったのでちょっと気になりましたね。

それにしても生首の絵はすごかったなあ。

種彦のことを思って描いたのが正しかったなら、すごく納得がいくんですよね。

実際はどうだったんでしょうね。

Hokusaiを評価!

はまはま的評価     ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️     7/10

いかにして世界的な芸術家になったのか、葛飾北斎という人物像がよく知れた気がします。

そして北斎に欠かせない要素である、圧倒的な大自然の綺麗な映像も堪能できるのも注目ポイントです。

終わりに・・・

歴史の教科書で少しかじった程度だった葛飾北斎という人物のことが知れて思うのは、物事を極限まで追求するには人生は短すぎるということですね。

90歳まで生きて絵を描き続けることの凄さと同時に、そこまでしてもまだ到達できない領域があるんだと実感できました。

一つのことに情熱を燃やすことのかっこよさが知れました。

すぐに投げ出すのではなく、何事も納得のいくまでやり続けなければいけませんね。

まずは北斎館を訪れてみようと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

     

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    はまはま
    初めまして。 はまはまと申します。 好きな映画やスポーツやエンタメなどについて書くブログを始めました。 語彙力がないヘタクソな文章ではありますが、いろいろと書いていこうと思います。 よろしくお願いします。